。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
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一方では白衣を纏った医師が、血を分けた弟の顔を見下ろしていた。
花火を終えた虚空の下、同じように青い顔色をした弟の頬をそっと撫でる。
体温を感じられない冷たい感触に医師は眉をしかめ、弟の血で染まった自分の白衣を見下ろした。
「翔―――………」
久方ぶりに弟の名前を呼んだが―――
その声は弟に
届かない。
◇◆◇◆◇◆◇
同時刻―――イチは都内のホテルのスウィートルームにいた。
「鴇田が事故!?」
部屋に備え付けられている電話を―――…ちなみに掛けたのは私だが、
イチは驚いたように目をみはり受け取った。
「どうゆうこと!?」
『私も詳しくは知らない。ただ、今回の盃の件とは全く無関係のただの追突事故だ』
「ただの―――事故………」
呆然と呟くその声は弱々しく、広い部屋にひっそりとこだました。
そう、あれは誰も予想できない不幸な、事故だったんだ。
「そんな―――」
彼女の問いかけのような独り言は、誰も聞くことなく、彼女の手から受話器が滑り落ちた。
ツーツー…
虚しい電子音が聞こえ、イチはしばらくの間受話器を無言で見つめていた。