。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
*話はさかのぼって昨日(花火大会の前日)のお話し*
鴇田の謹慎が明けた。
長かった。一週間もあの男とマンションにカンヅメなんて気が滅入っちゃう。
待ってました、とばかり女優の仕事を詰め込んだはいいけど、いきなり大阪にあるファッション雑誌の撮影?女優と関係ないし。
ただでさえ疲れてるのに、面倒なことを引き受けてしまった。
それでもあたしはまだこの業界じゃまだかけ出し。こなせる仕事は何でもしないと、食いっぱぐれる。
前の晩に新幹線に飛び乗り、そして夜通し撮影会。室内の撮影だから昼夜関係ないみたい。
何でもカメラマンの都合がこの時間帯しか空いてなかったとか。
モデルのあたしよりカメラマンのスケジュールを優先させるってどう?
女のマネージャーに文句を垂れたが、「あんたはまだ新人なんだし、文句言わずに仕事する」
なんてピシャリと一言。
おまけに鴇田組の組員だろうか、二人程の男が視界にちらちらと映る。
あからさまに引っ付いているわけじゃないけど、さりげなくあたしを監視している。
やんなっちゃう。
ため息をつきながらもカメラの前じゃお得意のスマイル。
「いいね~“you”ちゃん♪次、座ってみようか~」
カメラマンの言葉にもにこにこ頷く。
カメラマンがカメラのファインダーを通して、あたしを見つめてくる。
その視線は単なる仕事以上の何かを含んでいて、あたしは目を細めた。
挑発するように笑いかけると、カメラマンが僅かに顔を上げ、ほんの少しだけ笑みを返してきた。