栄人と優人ーエイトとユウトー
「それから、優人は視覚障害者が通う養護学校に行ったんだ。
幸い、家から車で送って行ける所にあったからね。
父さんも母さんも泣かなくなった。
よく家族の絆って言うだろ?普通それって、当たり前だけど見える物じゃないよね。
けど、あの時の僕ら家族には、それがしっかり見えてたよ。
お互いが支え合い、励まし合い、そして愛し合ってた。
俺も普通なら反抗期だったんだろうけど、そんな気にならなかったな。
常に弟中心の生活なんだけど、それでいいっていうか、俺自身もそれを望んでたんだ。
それくらい優人は、凄かった。
点字や杖での歩行、環境、あいつは毎日新しいことに直面するんだけど、嫌がったりしないし涙も見せない。
それどころか、お兄ちゃん、今日はこんなことがあったんだよって、笑顔で話掛けてくるんだよ。
さっきも言ったけど、神様は優人を選んだんだなって思った。
母さんがよく言ってたよ。
あいつ、学校でも泣いている友達がいれば、大丈夫だよ、一緒に頑張ろうって励ますんだって。
すると、自然とみんな泣き止むってね。
それを見ていた先生や母さん達まで励まされたらしいよ。
早和・・・、泣いてるの?」

早和は、天使のような男の子の笑顔が脳裏に浮かび、思わず涙が溢れてしまった。

「優人君って、本当に天使なのね。神様から地上に贈られた使者。」

「うん、俺もそう思う。けど、神様が本当にいるかは分からない。それからたった一年後に、俺達は、更に辛く苦しい思いをすることになるんだからね。」

栄人の顔から、先程までの優しさが消えた。それは、憎しみや悲しみを含んだ、初めて早和が見る顔だった。
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