栄人と優人ーエイトとユウトー
その後私は結局施設しか行く所がなくて、高校を卒業して今の会社に入るまでの十二年間、そこで暮らしたの。
今まで自分が幸せか不幸せかなんて考えたことなかった。
ううん、考えないようにしていたの。
けれど、あなたと出会ってからのこの二年間は本当に幸せだった。
こんな私でよかったら、ずっとあなたと一緒にいさせて下さい。」

二人は、お互いが辛い過去を背負って生きてきたことを知り、今まで以上に愛しく感じられた。

「早和、今度弟と会ってくれないか。できれば結婚したら三人で暮らしたいんだけど、駄目かな?」

「駄目じゃない。だって栄人の大切な人でしょ。私にとっても栄人の次に大切な人になるんだから。問題は、私が優人君に気に入ってもらえるかということよ。」

栄人は「なあんだ、そんなこと。」と笑って、全く心配していない。

「大丈夫。だって、優人は早和と似てるんだよ。俺が早和に惹かれたのも、早和に優人の空気を感じたからかもしれない。」

「空気・・・?」

早和の不思議そうな顔に、栄人が笑い出した。
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