栄人と優人ーエイトとユウトー
好きな人・・・。
優人が深い意味で言ったのではないと分かっていたが、急に早く打ち始めた鼓動を静めようと、早和は慌てて水を飲んだ。

「ふ、ふーん、そうなんだ。不思議だね。」

優人自身、なぜこんなに早和のことが自分に伝わってくるのか分からなかった。
初めて会った時から、その暖かみのある声や話し方に好感を抱いた。
そして、食事の間中楽しそうにしながらも常に気を使っている早和に、自分と同じ空気を感じた。
常に相手に気を使い、どこか人との間に一戦を引いてしまう。
それは意識しているのではなく、自然と身に着いたもの。
その日から、常に早和のことを気にしている自分に気付いていた。
けれど、なぜ気にするのか、それについては深く考えないようにした。

（兄貴が幸せになってくれることが、僕の一番の望みなんだから・・・。）

「そろそろ兄さんも来るでしょう。何食べるか決めておこうか。早和さん、ここはねえ、ハンバーグが美味しいんだよ。」

「詳しいなあ優人君。じゃあ私はお薦めのメンチカツ！」

「何それ！それにメンチカツなんてここにはないし。」

「冗談、冗談。ごめんなさい。」

二人は人の目を気にせず笑った。

そんな二人を、栄人は店の入口でしばらく見ていた。
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表紙・目次

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