栄人と優人ーエイトとユウトー
「手術をした場合、再発がなければ予後は心配いりません。
しかし、その確立は無いに等しい。
再発をした場合は・・・。
放射線や薬による治療の場合は、効果がある場合とあまりない場合があり、はっきりとした期間を申し上げるのは大変難しいのですが、持って半年、効果がない場合は三ヵ月程度だと思われます。
しかし、これはあくまで一般的なものであり、私達の思いもよらないことが起こる場合もあります。
悲観的になってはいけません。
ですが、治療は決して楽なものではなく、治療による副作用も生じてきます。
優人と同じくらい、見ているあなたも辛い思いをすることになるでしょう。
もし、それができないと思うなら、今のうちに優人と別れて、優人を栄人に委ねるほうがいいと思います。
どうなさいますか?」

早和はそんな質問をした近藤を、一瞬軽蔑した表情で見つめ、すぐに言い返した。

「婚約者がありながら、別の、しかも婚約者の弟を愛してしまうような女です。
先生がすぐに逃げ出してしまうだろうと考えられるのも仕方のないことかもしれません。
でも、私は心から優人を愛しています。
優人が辛い時こそ側にいて、彼を支えてあげたい。
栄人さんにも、優人君のことはきちんと話すつもりです。
でも、二人を引き離すことは誰にもできません。」

近藤は、笑顔で頷いた。

「すみません、早和さん。実は私には早和さんがそう答えるのは、最初から分かっていました。
あなたのことは、栄人からよく聞かされてましたから。
でも、どうしても確認せずにはいられませんでした。
きっとあなたが想像している以上に、優人にはこれから大変な事が待っている。
その優人を支えていくには、相当の覚悟と強い意志が必要です。
だから、あなたの気持ちをもう一度確認したかったんです。
すみません、あなたを試すようなことをして。
優人の為に、一緒に闘って行きましょう。」

「はい・・・。」

早和は近藤の優しさに触れ、今迄張り詰めていたものが一気に涙となって溢れた。
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