栄人と優人ーエイトとユウトー
早和の辛い過去や苦しみも分かっていたから、本当に幸せになってもらいたいと思っていた。
けど、何？優人君が好きになったから栄人さんと別れる？冗談じゃないわ。
じゃあ、私が悩んだり苦しんだりしたことは何だったの？
自分の想いを胸に閉じ込めて二人を応援してきた私は何だったのよ！
もう、あんたの顔なんて、二度と見たくない。」

里見は泣きながら一気に言うと、そのまま走り去った。

「そんな・・・。」

早和は、その場に座り込んでしまった。
里見が栄人に好意を持っていたことは、前から知っていた。
しかし、早和が栄人と付き合うようになると、早和の相談にのったり励ましてくれたりした為、それ程真剣な気持ちだったとは思わなかったのだ。

「誰も傷付けないように生きて来たと思っていたのに、一番側にいた人をずっと傷付けていたなんて・・・。」

早和は、しばらく立ち上がることができなかった。けれど・・・

（早和、あんたには優人君がいればいいでしょ！自分の事で悲しんでいる時間はないの。さあ立って、しっかり歩き始めるのよ。）

早和すっくと立ち上がり、しっかりとした足取りで歩き出した。
早和の顔に、涙はなかった。
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表紙・目次

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