軽業師は新撰組隊士!
鳥は道を見失う
――――――…
そして、数日後。
「楓、今日は初めての市中見回りです。夜に見回りなので昼間は横になっていたほうがいいですよ。」
昼食を食べ終わったときに、沖田に言われた言葉を守り、自室で横になっている楓。
はっきり言って、不安で怖い。
いざという時に、何ができるのか。
そう考えると、自分が無力に思えてしょうがない。
楓は脇差しを手に取り、刀を鞘から抜いてみた。
鞘に金属が擦れる独特の音が、気持ちを少しだけ凛とさせる。
「…新品、なのかな。コレ。」
タイムスリップした初日に男から奪ったものだが、
刃こぼれもしていなく、日の光を鈍く反射させている。
「返さなきゃ、だよね。」
あの着物と、この脇差しも、
返さなきゃいけない。
みんなを守るなら、他人の刀じゃなく、自分の刀を使いたいと楓は思った。