軽業師は新撰組隊士!
今日の夜の見回りは、一番組が担当することになっている。
そして、一番組も、三人ほどずつに分かれて行動する。
楓は沖田ともう一人の男と、見回りを開始した。
なんとなく、脇差しの柄に手を置いてしまう。
「緊張してるんですか?」
沖田が楓に問う。
「はい…。」
楓は正直に答えた。
暗闇のせいか、いっそう緊張する。
「緊張するのは当たり前です。」
沖田はそう言うも、
「しかし組長…、所詮は女。足手まといになられては困ります。なぜ新撰組に入れたのか…。」
もう一人の男は、不満のようだ。
“足手まとい”。
その言葉に楓は落ち込む。
すると、
「あのですね、この子は土方さんが認めたんです。“女隊士”なんて、特例まで作って。」
「し、しかし…」
「あなた、あの“鬼の副長”に逆らうつもりですか?」
「…すみませんでした。」
その会話に、楓は目を丸くする。
土方の影響力にもだが……なんといっても、沖田だ。
『僕は認めません。』
以前、そう言われた。
でも今
同じく楓を認めない人から庇ってくれた気がした。