軽業師は新撰組隊士!
振り返って、じゃあ行きましょうか、と言う沖田に
「ありがとうございます…。」
と、楓は小さな声で言った。
すると、沖田はにっこり笑って言う。
「感謝の言葉はいりません。」
「でも、」
「本当のことを言っただけです。あなたは“例外”。隊士だと認められた唯一の女性です。」
「…、はい。」
「だから…、否定の言葉に負けないでください。」
―――負けないでください
その言葉で、楓は考える。
否定されるために隊士になったわけじゃない。
負けるために隊士になったわけじゃない。
…じゃあ、なんのため?
それは、
「…、負けませんよ。何事にも。私、ようやく守りたいものができたんですから。」
…守るため。
居場所を、仲間を。
「それでこそ、土方さんの認めた人です。」
沖田はそう言って、暗い夜道を歩み始めた。
楓と男は、それについて行った。