軽業師は新撰組隊士!
しかし、楓は動じない。
静かに、相手を見据える。
「小僧、そこの女はな、俺に茶をぶちまけたんだ。詫びをするのは当然だろ?」
「しかし、あなたは言いましたよね?『すみませんで着物は綺麗にならねーんだよ。』と。身体で詫びをしたら着物は綺麗になるんですか?」
そこで男はグッと押し黙る。
正論を言われたからだ。
「詫びをしろと言うのなら、ここの店主に着物を借り、あなたの着物をこの方に洗濯してもらえばいい。」
「………チッ。」
男は舌打ちをひとつして、去っていった。
正論に正論を重ねられれば、反論などできないからだ。