軽業師は新撰組隊士!
「……僕の負けですね。」
あーあ、と言って落とした竹刀を拾う沖田と
「え、…勝った、んですか?」
信じられない、とでも言いたそうな楓。
「“勝ちに不思議の勝ち有り、負けに不思議の負け無し”って言うでしょう? 今回は僕の負けです。」
「そう…ですね。不思議すぎて目玉が落ちそうです…。」
「何ですかそれ、怖いんですけど。 ……僕は楓が変則的な戦いをする事を忘れて、勝ちを確信して油断しました。――楓の勝ちですよ。」
ニッコリと笑顔で言われて、ようやく実感が湧く。
(勝った…沖田さんに。)
少しは強くなれたかもしれない、と思った。
「あれ?楓、指を切ったんですか?血が出てますけど。」
「ん?あぁ、大丈夫です。」
この前、調理をしていたときに出来た傷が開いたようだ。
治りかけていたが、血がにじんでいた。
「ハンカチを当てておけば、大丈夫です。」
心配させないように言ったものの、
隊士たちはざわつく。