軽業師は新撰組隊士!
鬼の罠に嵌る
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楓の姿が見えなくなったのを確認して、俺は原田を見据える。
「さて、と。話を聞こうか、なぁ原田?」
「新八は…部屋に戻っておいてくれ。」
「え、うん…。」
退場を促された永倉は、チラチラと俺らを見ながら去っていった。
「原田…、お前」
「分かってんだ、分かってんだよ土方さん。だがな、言ったことはやっぱり本心なんだ。」
「………。」
原田は壁に寄りかかって、空を見つめる。
心とは反対の、快晴だ。
「俺も、嬢ちゃんが間者だなんて、思っちゃいねぇ。ただ、……仲間に不信感を抱かせるような、そんな行動をしたのが許せねぇんだ。」
「……あのなぁ。」
俺はガシガシと頭を掻く。
髪が少しグチャグチャになるが、気にしない。
「火のないところに煙はたたぬ、なんて言うがな、自分で火を点けなくても、他人が点けるとどうなるか…分かるか?」
「…土方さん、それはどういう意味……」
「行動を起こしてなくても、噂は流れる。」
原田の言葉を遮って言えば、原田はハッとしたように俺を見る。
その瞳には、後悔の色が浮かんでいた。
「俺は…間違ってたんだな。嬢ちゃんのこと、信頼できてなかったんだな…。」
「そりゃお前。一カ月そこらで信頼できるか、って言われたら難しいだろ。」
「それでも、…土方さんは出来てただろ。それに、信頼してなくても、納得はできたはずなんだ。だって…」
―――あんなに一生懸命、俺らと同じになろうとしてんだから。