軽業師は新撰組隊士!
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俺は今、楓の部屋の前にいる。
襖をソッと開けて中を見ると
「寝てるか…。」
布団も敷かずに寝ている楓の姿があった。
楓の父である克の姿は見えないが、どうせ近藤さんに捕まってんだろうと予想した。
“来るなと言うておろうがー!”
“何故だい!?マタタビだよ!?マタタビ!”
“元は人間じゃ!そんなもんに興味など示さんわ!”
「……、ドンピシャだな。」
遠くから聞こえた一人と一匹のやり取りに、呆れた。
しかし、今は克がいなくてよかった。
なぜなら
「…泣いた、よな。」
寝ている楓の頬に、涙が伝った跡があったから。
俺は楓の頬を撫でる。
涙の跡が、無くなればいいと思いながら。
「結局、俺はお前を泣かせてばかりだな…。」
『俺はお前を泣かせない』と、約束していたにも関わらず。