軽業師は新撰組隊士!



「さ、さっきから馬鹿馬鹿って……酷くないですか!?」


楓は憤慨したようすで言うが、俺は冷静に言葉を返す。


「馬鹿だろ、いいか?お前は俺が一回屯所に連れてきた。だから、浪士に狙われて怪我をした。で、総司がまた連れてきた。…だろ?」


また馬鹿と言われたことが不満だったようだが、楓は頷く。

それを見て、俺は再び話し出す。


「つまりだな、俺らがお前を此処に連れてきたんだ。んな奴が間者なワケあるかよ。」

と、言って

「それに、元軽業師の間者なんて、不自然だろ。普通なら忍とでも名乗るさ。」

と付け足すと、楓は一瞬ポカンとして、それから微笑んだ。


「そうですね。…軽業師より、忍として名乗った方が自然に新撰組に入れますもんね。」

「ああ。」

「土方さん、土方さん。」

「ん?」


楓は俺の着物の袖をクンッと引っ張って


「ありがとうございます。信じてくれて、ありがとうございます。」


と、身長の差のせいで、上目づかいになりながら、そう言った。



< 162 / 250 >

この作品をシェア

pagetop