軽業師は新撰組隊士!
何も言わない楓に、不思議そうな顔をする土方。
「どうした。」
「い、いえあの……。」
何か言わなきゃと思い、まだ立っている土方の顔を見上げ、目を合わせるが
「……、っ!」
顔が紅潮する。
心臓がせわしなく動きすぎて痛いほどだ。
思わず視線を逸らす。
土方はそんな楓を見て、お膳を置き、座りながら克に問いかけた。
「親父さん、コイツになんか言ったか?」
「ちょっとな…。我もまさか、楓が自覚してないとは思うてなかったんじゃ。余計なことをしたかもしれん。」
「いや、むしろ有り難い。」
このやりとりは、心臓を落ち着かせるのに忙しい楓には聞こえなかった。