軽業師は新撰組隊士!
原田は藤堂の口を解放し
「悪かった。言い訳はしない。」
軽く頭を下げる。
「あの時も言ったが、噂を信じてるわけじゃなかった。ただ、疑われる。そんなことをしたことが許せなかった。」
楓は首を縦に振る。
確かにそう言っていた。
あの時はただただ悲しかったが、今なら違う。
正義感が強くて、真っ直ぐな仲間思いの組長。
「でも、嬢ちゃんは何もしてなくて、大変な思いして、嬢ちゃんのいた時代での当たり前をしていただけで…」
「原田さん…。顔、あげてください。」
原田の言葉を遮って言うと、原田はゆっくりと顔を上げた。
その表情は、眉間にしわを寄せていて、怒られる前の子供のような表情だった。
「私、怒ってません。」
怒ってない。
原田が怒ったのは私の言動が隊士を不安にさせたから。
紛れもなく私のせいで。
だから
「原田さんは悪くないから。」
私は、怒ってません。
そう言うと
原田は、ふっと表情を緩め
「……だよなぁ。嬢ちゃんは、そういう人だもんなぁ。」
嬢ちゃんは優しいからなぁ、と言った。