軽業師は新撰組隊士!


かくして、
本命であろう四国屋には土方率いる二十四名の隊士が
池田屋には近藤率いる十名の隊士が動くことになった。


「楓。」

「え、はい。」

「お前は、どっちに行く?」


土方にそう問われて、楓は考える。


(いつもなら…)


いつもなら、迷わずに土方について行った。

たとえ四国屋が本命で、危険だとしても、
土方がいるから安心できたはずだ。


でも


(今は…)

――時間が、ない。


楓はムリヤリ笑顔を作って


「私、池田屋に行きます。池田屋が本命だったら、一人でも多い方がいいでしょうから。」


と、言った。


「そうか。…四国屋が本命じゃなく池田屋が本命だったら、俺らもすぐに向かう。」

「……はい。」



今夜
きっと、すべてが動く。


< 207 / 250 >

この作品をシェア

pagetop