軽業師は新撰組隊士!
かくして、
本命であろう四国屋には土方率いる二十四名の隊士が
池田屋には近藤率いる十名の隊士が動くことになった。
「楓。」
「え、はい。」
「お前は、どっちに行く?」
土方にそう問われて、楓は考える。
(いつもなら…)
いつもなら、迷わずに土方について行った。
たとえ四国屋が本命で、危険だとしても、
土方がいるから安心できたはずだ。
でも
(今は…)
――時間が、ない。
楓はムリヤリ笑顔を作って
「私、池田屋に行きます。池田屋が本命だったら、一人でも多い方がいいでしょうから。」
と、言った。
「そうか。…四国屋が本命じゃなく池田屋が本命だったら、俺らもすぐに向かう。」
「……はい。」
今夜
きっと、すべてが動く。