軽業師は新撰組隊士!
口を塞いでいる相手は、人通りの少ない場所に来ると、布を楓の口から遠ざけた。
楓は背後から自分の口を塞いでいた相手を見た。
ニィ、と笑うその男は、30代半ばだろうか。
「坊ちゃん、アンタ、新撰組の屯所から出てきたな?」
「そうですけど……オジサン、なんか用ですか?」
楓がそう言うと
――チャキッ
「……この刀は何ですか。」
「坊ちゃんに拒否権はねぇ。新撰組の情報、吐いてもらおうか。」
「……おぇぇー新撰組の情報ーおぇぇー。」
「ちげぇよ!」
頑張った楓の冗談は、男には通用しなかったらしい。
首に当てられた刀に、グッと力を入れられ、ツーと血が首筋を伝う。
薄く切られたらしい。