軽業師は新撰組隊士!
男はドサリと倒れこむ。
「クソッ…。なん…で、殺さね…え、んだ…。」
そのまま気絶した。
この時代で、
負けは死を意味する。
それは男を見下ろす楓にも分かっていた。
「躊躇しては生きていけないのかな…。」
楓は脇差しを鞘に戻しながら呟いた。
斬るのは、怖い。
殺すのは、怖い。
その人の命を背負って生きていく覚悟はない。
それが楓の本音だった。
慈悲などではないのだ。
「私は……。」
生きていけるのだろうか。
右も左も分からないこの時代で。
気絶した男を見て、考えていた。