軽業師は新撰組隊士!
なんというか、デリカシーというものが欠けている。と、楓は思った。
救いを求め、土方を見ると
「…。土方さん、何で怒ってるんですか?」
土方は無表情……の中に怒りを抑えているようだった。
楓は軽く困惑する。
「何でもねぇ。」
ぶっきらぼうに言い捨てる土方。
「いや、あるでしょう。」
「何でもねぇ。」
「………。」
私が何か怒らせるような発言をしただろうか、と、楓は先ほどまでの自分を思い返した。
が、思い当たる節はない。
「副長ー?やだな、僕等が“お気に入り”と喋ったからって拗ねなくてもいいじゃん。」
藤堂が土方の肩を軽く叩きながら言う。
土方はその手をひねりあげた。
「痛、っ。」
「拗ねてねぇ。ったく。」
「ぁあ、痛いな、容赦ないね副長サン。」
ヘラヘラと笑う藤堂のおかげか、少しだけ土方の表情が柔らかくなった。