軽業師は新撰組隊士!
楓は身体を刀から遠ざけない。
少しでも動けば、首の皮が切れ、血が出るのだろう。
「沖田さん。」
楓が沖田に語りかける。
「沖田さん、私、確かに逃げてきました。」
ピクリと、沖田が動く。
認めるとは思ってなかったのだろう。
「(なぜ…、ですか。)」
――なぜ逃げないのですか。
沖田が刀を抜いたのは、そうすれば怯えると思ったから。逃げると思ったから。
なのになぜ
「(僕を真っ直ぐに見るんですか?)」
沖田には分からなかった。
そして楓は語る。
「私には…重かったんです。立場が。いつも、私が主役みたいな…みんなが前座みたいな…、そんな扱いは。」
まだ子供の楓が、大人であり先輩である仲間の上に立つのは、キツかった。