軽業師は新撰組隊士!
―――――…
「…うじ、……総司?」
「あ、なんですか?僕に用ですか?平助。」
その晩、縁側でぼーっとしていた沖田に話しかけたのは藤堂だった。
新月で、月明かりもなく真っ暗だ。
「……鳥って、夜目なんですよねー。」
「そうだけど、どうしたの?総司?」
「僕の性格は、真っ黒いところで隠してたんで、鳥さんにバレるとは思ってなかったんです。」
「“鳥”って…楓?僕も失礼な性格だけど、総司も失礼だね。」
そんな藤堂とのやり取りは、沖田の頭には入ってこなかった。
『私、綱渡りの綱が切れて、凄い高さから落ちて…死にました。でも、お父さん…、今は黒猫ですが。生き返らせてくれました。』
『でも、それは三カ月だけです。これは、内緒ですよ。』
「彼女、本当は逃げ出したいんでしょうね。」
気づいていた。
楓の全身が細かく震えていたことなど。
逃げ出したい衝動を抑え、戦うことを決意した彼女。
「…さあね。寝ようぜ?総司。」
「うん。」
―――しょうがない、ですね。
「僕も認めますよ……楓。」
ただ、夜が更けていった。