微動
写真に写っている人物たちに話が聞きたかったのと、契約書に記載された支払い方法が気になったためだ。

次に、香奈子のマンションへ行った。

しかし、何もめぼしい物はなかった。

警察にほとんど押収されたのだろう。

志田の奴、ここで何を見つけた?

私はすぐに写真の人物を探した。

坂本の店で、すぐに分かった。

常連客ばかりで、男女共に坂本と交遊関係にあった。

その中の一人に話を聞いてみると。

被害者と特別仲の良かった服部という男が、事件後に現れなくなったという。

被害者と、男女関係のありそうな女性はいなかったか訊いてみたが、思い当たらないという。

真犯人は女性ではないのか?

先入観で男女関係のもつれを想像していたが、思い違いをしていたのかもしれない。

私は、服部を探すと同時に、車の購入契約書を調べた。

残り3日間。

車はすぐに分かった。

現金一括購入で、200万円の中古車を、事件3週間前に契約していた。

代金の支払いは済んでいる。

契約の際の様子を探ったが、特に不都合はなかったようだ。

但し、契約には二人で来ていた。

もう一人は香奈子ではなく、服部である。

服部からの借金で、金銭トラブルが起きたのか?

すぐにでも服部を見つけたいが、手掛かりがない。

焦りが募る。

そんな折、光明が差した。

坂本の店の常連客から連絡が入った。

服部が、病院の息子じゃないかというのだ。

真偽の程は確かではないが、藁にも縋る思いで、『代表者・服部』の病院を探した。

残り2日間。

服部が代表の診療所が見つかった。

すぐに向かったが、息子の服部和馬は…。

自殺していた。

遺書に事件のことは書かれていなかった。

このままでは、真相は闇の中。

香奈子は有罪になるだろう。

私は志田を訪ねた。

「そこまで突き止めたんですね。でも、そこで終わりなんです。担当検事が明日の期限に、起訴することを教えてくれましたよ」

「打つ手なしか…」

「ここまで調べたのなら、なぜ私が北村香奈子の犯行に疑問を持ったのか、教えましょう」

志田にも、真相を暴けない悔しさがあるのだろう。
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