feel〜優しい体温〜
−じゃ、いくぞ。


「あ……コレだぁ……」


ハッキリ言ってクラシックなんて興味がなかった私にとって、夢のような時間が始まった。


やっぱこの人はすごく上手いんだと思う。


生の音だってのもあるんだろうけど、すごく表情がある感じ。


でも何でだろ……明るく優雅なところより、たまに出てくる、暗い……淋しいところの方が上手い気がする。


「悲しいよ……淋しいよ……」って楽器越しに伝わってくる。


ホントは、そういう意味の部分じゃないんじゃないの?


やっぱこの人、耳が聞こえなくなった悲しみに今でも縛られてるのかな……。


……あ、終わっちゃった……。


「あの……凄く良かったです!感動しました!」


「………………」


「あれ?ケンタ君?ハルトさん、何て言ってる?」


−あ、あのさ……


って、ケータイに打っても見えるわけねーか。参ったな……チビ、いつの間にか帰っちまったんだよな。


何考えてんだアイツ。これじゃ返事のしようが……ある……あるけど、これはちょっと……。


\ケンタク〜ン!チョットォ!


探してるし……こ、これは……えーい!しょうがねぇ!


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