feel〜優しい体温〜
溢れ出した俺の感情は、あらぬ方向へと向かって行く。


「そう……そうだよ!……あの時テメェがジュカをうしろに乗せたりしたからアイツは死んだんだ!テメェが殺したんだよ!リョウタ!」


「ハルト……」


俺は力一杯リョウタの顔面を殴り付けると、雨の降りしきる外へと飛び出した。


あの時の様に……。


「ジュカぁ……ジュカぁ……帰って来いよ……結婚すんだろうが……」


今まで涙一つ流せなかったせいだろうか……溜まりに溜まった悲しみが爆発し、異常な興奮状態が続いた。


心の制御が効かない状態で12月の冷たい雨に打たれ続けた俺はその場に倒れ込み、気付いた時は病院のベッドの上にいた。


ん?あ、そうか……あの時……12月5日?三日間も眠ってたのか。お?看護婦が来た……


「…………………」


何だ?ちゃんと声出せよ。


「あ……う………?」


声が出ねぇ?……違う……耳が聞こえねぇ……。


ジュカを失った俺は、音までも奪われてしまった。


俺の全てが……今終わったんだ……。


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