feel〜優しい体温〜
「え……と、どなたですか?」


「あ、すいません。俺、アイツがオーケストラやってた時の同僚で、良太<リョウタ>って言います」


「はぁ……じゃあ、ハルトと仲いいんですか?」


これはひょっとしたら、ハルトが今何してるか解るかも……。


「昔は仲良かったんですけどね。ちょっとありまして……アイツから何か昔の事聞いてます?」


「いえ、何も……」


「そうですか……。実は…………………………………」


やっぱり私、ハルトの触れちゃいけない所に、土足で踏み込んだんだ。


最悪だ……


ハルト、婚約してたのかぁ……しかもそんな大事な人を失って……。なんか、心臓を素手でギュッと握られた感じ。胸が痛いよ。


「それから俺、恨まれてるみたいで……話し掛けてもアイツに辛い想いをさせるだけなんです。だからたまに通る公園を覗いて三人が仲良くしてるとこ見ると安心できたんです。あぁ……アイツ生きてるなって……」


「……でも、それじゃダメですよ!何にも悪くないリョウタさんが恨まれるなんて!」


「いいんです。それを生きる力にしてくれるんなら……じゃ、俺行きますね!ハルトの事、お願いします!」


「……行っちゃった……ダメだよ、そんなの」


いつも一緒にいた仲間を怨んで生きるなんて、悲しすぎる…。


「……ふぅ……じゃ、ケンタ君。私達も行こうか!」


「うん!姉ちゃん、ご馳走様!」


「はぁ〜い。いい子ね!」


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