feel〜優しい体温〜
「ケンタ君……ねぇケンタ君ってばぁ!」


ダメだ……血が止まらないよ……お願い、早く来て!


「おぅ姉ちゃん、救急車来たぞ!」


「ハ、ハイ!ケンタ君しっかり!……隊員さん!どこの病院に搬送されるんですか?!」


「市立病院の受け入れ体制が整っているのでそちらに。……一緒に乗って行かれないんですか?」


「あ、私この事知らせなきゃいけない人がいるんで!すぐに向かいますから!」


そうだ。この事を早く……早くハルトに知らせなきゃ!ハルト……ハルト!


「はぁっ……はぁっ……ハルトんち、どの辺なんだろ……」

古いアパートって言ってたし、あっちかな……。目見えなくなってから行った事ないけど……そんな事言ってる場合じゃない!


「ハァッ……ハァッ!」


「あ、あなたどうしたの?そんなに慌てて!血だらけじゃない!」


「あ、あの……ここら辺でハルトって人住んでませんか?結構凄い音楽家みたいなんですけど……」


「音楽家の方?いや〜、聞かないわねぇ……苗字は何ておっしゃるの?」


「……わかりません……す、すいません。ありがとうございました!」


う〜、何で私苗字も聞いてないんだろ……もう!次次!


「ハァッ……ハァッ……ゲホッ!どこにいんのよ!」


ダメだ……もう二時間くらい捜し回ったけど、あてずっぽうじゃ捜しようがないよ……結局公園に戻って来ちゃった……足が震えて動かない……


「助けてよ……ハルト……助けてよぉ!!!……うぅ……うぇっ……ケンタ君がぁ………」


グイッ!


「えっ……?」


−何してんだよ。


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