feel〜優しい体温〜
「ねぇハルト……ちょっといい?」


−あ?何だよ、改まって。


「今日、ハルトのお友達に会ったよ」


−は?友達って誰だよ。


「リョウタって人」


−………で?


「このままでいいのかなって……ゴメン。昔の話も全部聞かせてもらったよ」


−はぁ……やっぱアイツ最低だな。人の事ペラペラと……。


「違うよ!……私違うと思う……。誰にでもペラペラ喋る人じゃないんじゃない?縋る様な思いで、仕方なく私に話したんじゃないかな……」


−…………。


「ハルトだって心の中じゃ解ってるんだよね?自分の悲しい気持ちをどこにぶつけていいのか解らなくなって、苦しくて苦しくてリョウタさんに向けちゃったんだよね?」


−違う……。お前に何が解るんだよ。アイツが、リョウタがジュカを殺した。


ハルトの手、冷たい……。温度とかじゃなくて、感情を必死に冷やしてる感じ。


もしかして、もうハルトと会えなくなるかも知れない。でも言わなきゃ……。


これからどんなにハルトが遠回りしても、リョウタさんの元に辿り着いて、大好きな音楽と共に生きられます様に…。


「ハルト!いつまでも甘えてちゃダメ!リョウタさんハルトの気持ち、よく解ってるよ?それでもハルトが生きててくれてればって、自分から嫌われ役引き受けてるんだよ?!リョウタさん、どれだけ辛い思いしてるか……それじゃジュカさんの気持ちだって浮かばれないよ!!!」


−……………。


「そんな甘えた人と一緒に居るの、私嫌だから。一人で帰るね」


本当はその場を離れるのが嫌で嫌で仕方ない……


でも私は、思い切ってハルトに背を向け、歩き出した。


追い掛けて来る音は……しないな。


ハルト……ばいばい……。


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