feel〜優しい体温〜
「ハルト……?」


−あぁ、久し振りだな。


あ、ダメダメ……。嬉しさが顔に出そう……。もう!会わないって言ったの私なんだから!


「な、何?もう会わないって言ったでしょ?」


−これ……渡したくてさ。


「ん?……何?この紙……」


−……チケットだよ。コンサートの。


「へ?コンサートって……誰の?」


−決まってんだろ?……俺達のだよ。


「ハルト……もしかして!」


−あぁ。リョウタに会って謝って来た。"やっぱり俺は音楽がやりたい"ってな。


−それに、気付いたんだ。今までずっとジュカに手枷足枷着けて、苦しめて来たんだって……。


−だから俺、ジュカを大事な大事な思い出にする事で、開放してあげる事にしたんだ。


……ハルト……頑張ったね!本当に……辛かったよね?ハルトごめん……もう我慢出来ない!


「ハルト、しゃがんで!」


え?何だよ……別にいいけど……


ギュッ……


う、うお?!苦しい……なっ……何だよ……何か背中に書いてる……




ハ・ル・ト・よ・く・が・ん・ば・っ・た・ね




俺の背中から、凄く温かいヒカリの気持ちが伝わって来た。


感じる……感じるよ。穏やかな日差しの様な、ヒカリの体温……。


そして、俺の体に感じられたヒカリの体温は涙となり、俺の頬を伝う。


「うっ……うっ……うぅぅぅぅ…………」


ハルトの声……初めて聞いた……


「ハルト……昔、おばあちゃんが言ってたよ。傷なんて、絆創膏貼らないで風にさらした方が治り易いんだって」


「きっと心の傷も一緒だよ。自分の中に閉じ込めてたら、ずぅっと治らないんだと思う。だから、これからは私に見せて……私はずっとそばにいるよ……」


−……ありがとう。ヒカリ、お前はやっぱり"光"だな。


「フフッ……光、見えないけどね!」


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