feel〜優しい体温〜
そして待ちに待った演奏が始まった。


ハルトやジュカさんと同じ様に、この日を待ち焦がれていたリョウタさんもまた、万感の想いだろう。


完全に息のあった二人の演奏は、素人目にも解るくらい最高のメロディ、ハーモニーを奏でている。


"シンクロニシティ"って聞いた事あるけど、正にこの事を指すんだと思う。


「ねぇお母さん、これ何て曲?」


「亜麻色の髪の乙女」


「え?それって島谷……」


「絶対言うと思った……クラシックの"亜麻色"って言ったらこれよ。木管のアンサンブルなんかでは良く使われる曲ね」


「へぇ……」


アンサンブルってなんだろ?……でも、優しい感じで凄くいい曲……。


ホントに私ってクラシックの事全然解ってないなぁ……。もっと勉強しよっ!


そうこう言ってる間に一曲目も終わり、二曲目が始まった瞬間、私の全身に鳥肌が立つ。


私とハルトの距離を縮めてくれた、大事な曲。そう……


「……目覚めよと呼ぶ声あり……だね?」


「あら、良く知ってるわねぇ?」


「うん。これだけは……ね」


でもなんだろう……いつもと全然違う感じがする。


前の様に暗いところの主張ばっかりじゃない。


優しく"さぁ、目覚めなさい"って囁く感じが良く出てる。


ハルトも目覚めたんだね。


やっぱりハルトのクラリネットは、世界一だよ。


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