青い春と風の中で
「はっ。――数学のプリントをコピーするなんて、嘘ですよ…。僕は2人きりでお話したかっただけなんですから」


そう言って、どんどん近付いて来る新倉。

逃げようとすると、新倉がドンッと音を立てて、両手を伸ばして壁に手をついた。


「にい…くらセンセ……?」


困惑する表情をする葵を見て、恍惚の笑みを浮かべて口を開いた。


「……君は僕だけのモノですから」


どんどん顔が接近してきて、唇と唇が重なり合いそうになり、葵は抵抗したものの、ビクともしなかった。


―――いやッッ!!誰か――ッッ……

潤む瞳をギュッと閉じて、心の中で精一杯叫んだ。



【――ガラッ……!!】


突然にドアが開いて、新倉が驚いた表情で口を開いた。


「……お前……」


「……何やってんだよ、センセ」

――そこに現れたのは笹川だった。


新倉がよそ見をしているうちに、勢い良く押し付けて、葵はコピー室から出て行った。



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