青い春と風の中で
「――あのぅ…お話の途中に失礼しますが、新倉先生と篠崎先生はお知り合いなんでしょうか。」

坂上先生が、葵と新倉に視線を向けた。


「えぇ、私が教育実習生の頃に通っていた学校で、新倉先生とお会いしたんです」

葵は、チラリと新倉の方を見つめた。


「…成る程、そうでしたか。――そういえば…以前、新倉先生は"燐光(リンコウ)高校"に赴任でしたよね」

坂上が納得したように、うんうん。と頷く。


「――本当にそれだけの関係かしら?私には随分、親しそうに見えたわ。」


腰に手を当てて、如月先生は右手の人差し指を突き出して、葵と新倉の方を交互に指し示した。


「――き、如月先生。お2人に失礼ですよ」

慌てて、坂上が間に割って入ると、静かになだめた。


「――あら、冗談よ冗談。ちょっとからかいたくなっただけよ。坂上先生、」

フフッと微笑むと、明るい茶色の長い髪をかきあげる。


「全く…如月先生は、相変わらずですね。――あ、篠崎先生、新倉先生失礼しました。」

坂上は、如月を見つめて肩をすくめた。
そして、如月の代わりに謝罪をした。


「いえいえ、僕は気にしてませんよ」

「えぇ、私も気にしてませんから」



「――あら。もうこんな時間だわ。私、保健室に戻りますね」

如月が、ヒラヒラと片手を挙げて職員室から出て行くのを見送った後に、新倉が、ひとこと。


「それでは、僕達も教室に向かいましょうか」


「篠崎先生、頑張って下さいね」


坂上に会釈をしてから、葵は職員室から出た。


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