引きこもりの勇者
次の日の午後、亀井は新しいゲームを買うために家を出た。


決して裕福ではない亀井に新作のゲームを買うお金などない。


ゲームショップの隅のゲージの中ある安くて面白そうな中古のゲームを探すのが、数少ない楽しみの１つだった。


いつものようにゲージを漁っていたが、ふと１つのゲームを手にとった。



どうやらRPGゲームのようだ。


主人公の勇者が、旅を続けながら成長し、魔物に攫われたお姫様を救い出すというどこにでもありがちな内容だった。


しかし、値段を見ようとして、ゲームを裏返した亀井は思わず声をあげそうになった。


そのゲームをそのままレジに持っていき、見慣れた顔の店員に声をかけた。


「嘘だろ？なあ、健太くん、これ本当に300円でいいの？」


健太は宇佐美の兄であり、亀井よりも２つ年上である。


今はこの近所のゲームショップでアルバイトをしている。


小さい頃から３人でよく遊んでいたため、健太のことは本当の兄のように慕っていた。


「え、そんな安いのあったのか。そこの中のゲームは店長がチェックしているはずだし、300円って書いてあるならそうなんだろ。面白かったら今度貸してくれよな。」



これ本当に面白いのか、と思いつつも300円という値段に惹かれ、亀井は結局そのゲームを買って家に帰ることにした。






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