引きこもりの勇者
その頃、宇佐美は1人暗闇の中にいた。

幼稚園の頃の記憶が脳裏に蘇る。



公園で泣き続けるわたし。

どうして誰も助けてくれないの。

わたしの声は届かないの。



そんなとき、宇佐美の耳に聞き慣れた声が飛び込んできた。


「おい、やめろよ。さあ、早く。早く逃げよう。」


ああ、現実世界にも勇者はいるんだ。



早くあの時みたいに私を助けにきてよ。

あの時みたいに私の手を引っ張って。


あなたは、そんなに弱くない。
今でもあなたは私の勇者だから。


右も左も分からない暗闇の中、宇佐美は静かに目を閉じた。


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