幸せはひとつでピリピリ甘い
風にのって、微かに、春の匂いがする。
「あったかくなったね〜。いや、でもちょっと寒いかも」
「いや、あったかいだろ。」
そんな会話をしながら、自転車を置いた駐輪場まで二人でいく。
つかず離れずの、二人の距離。
本当は、手、繋ぎたいんだけどね。
私、臆病だから。
「あ、やっぱさみぃ」
駐輪場につくと、彼は鞄を自転車の荷台に置いて、その中から学生服を出して羽織った。
「ほらやっぱさむいじゃーん」
笑いながら私は言う。
中学からお世話になっている私の自転車を漕ぎ出すと、ペダルがきしきしと軋んだ。
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