幸せはひとつでピリピリ甘い
家族のこと、学校のこと、友達のこと、部活のこと。
ばいばいするのが嫌なせいか、話すことが、どんどん出てくる。
君との取り留めのない話は楽しくて、私の胸はじわりとあつくなる。
君に触れたい、近付きたい、だけど、なかなかできない。
そんな自分にいらいらする。
もう、
ほんと、
臆病なあたし、どっかいってよ。
なけなしの勇気を振り絞って、彼の指を、そっと握る。
彼も、握り返してくれる。
会話が途切れる。
彼の指は、相変わらず私の指を優しく握り返している。
ぴりぴりと体がむず痒くて、なんだか涙が出そうになる。
幸せって、こういうことかな。
彼と自分の指にやっていた目線を、彼の顔に合わせる。
恥ずかしいけど、目は逸らさない。
勇気を、もうひとしぼり。
「いつも、ありがと」
私の、精一杯。
彼は、優しく笑った。
*幸せはひとつでピリピリ甘い*