涙色のlove story
俺は黙って院長室を出た。
若年性アルツハイマー症とは、
脳が次第に萎縮していき、
知能、身体全体の機能が衰えていき、
ついには死に至る病。
アルツハイマー病の原因は未だわかっておらず、
従って効く薬はほとんど無く、根本的な治療もない。
65歳以下のアルツハイマー症を
若年性アルツハイマー症と言う。
なんで、結仁が…
なんで、治療法がないんだ…。
俺は結仁にどのような顔で会えばいいか
全くわからなかった。
何事も無かったように会うのか、
泣きながら会えばいいのか…
ただ考えるだけで涙しか出てこなかった。
前方から結仁がゆっくりと歩いてきた。
「耀介…どうしたの。
なんで耀介が泣いてんのさ。
あたし、余計泣きたくなるじゃんか…。」
目にいっぱいいっぱいの涙を溜め込み、
声を震わせながら、結仁は言った。
そんな結仁を俺は強く抱きしめた。
…いや、抱きしめる事しかできなかった。