素直になれば
いつもより少し急がしめに準備をした。
「里愛ちゃん、イスそんなに持ったら重いし、俺持つからボトルよろしくしていい?」
笑いながらそう言う逆井先輩に、胸がキュンと鳴る。
もしかして、あたしを気遣ってくれてる?
そんな儚い期待が生まれてしまう。
「わかりました!すいません、イスお願いします。」
「は〜い。」
イスを渡すときに触れた右手は、魔法の右手だと思えるくらい、あたしはドキドキしていた。
ボトルに氷と水をいれるときだって、先輩が触れた右手を洗いたくなかった。
こんな風に思うあたしは、変態なのかもしれない。
そして、逆井先輩には沙那さんがいるって知った、この短期間で急速にスキの気持ちが増えていくあたしは、軽いのかもしれない。