素直になれば
「なんで…。どおして…わかるの?」




秀は、小さな声で「やっぱな。」と言って、短くため息をついた……気がした。



「沙那さんの話題が出たときさ、里愛、笑えてなかったし。俺が話し振ったときだって、あんな作り笑い、気付くっつーの。」





「秀…鋭いね。」




秀に言われて、また辛い気持ちが蘇ってくる。


逆井先輩の隣には、あたしはいなくて…。

あたしなんか、必要なくて…。

沙那さんは、すごくいい人で、憎むことなんてできない。

二人は仲が良くて、あたしが入り込む隙間もない。

そもそも、先輩はあたしなんて……眼中にない。



思い出して、また胸がズキズキと痛みだした。




「里愛…。」
「そっちは?…秀は、依緒ちゃんと、どうなの?」




なにか言いかけた秀の言葉を遮るように、逆井先輩の話題を終らせるために、今は関係なかった依緒ちゃんの話題を出した。


< 66 / 106 >

この作品をシェア

pagetop