AKIRA

晶side



 クラスにも慣れて、そこそこ友達も出来たと思う。

 なんか、俺の喋り方が面白いとか言われるけど、そこは喜んでもいいのか?

 でも、陽の隣に座っているのは、まだ慣れない。

 毎日緊張しっぱなしで、今も心臓が壊れそうなんだよ。

 陽も、友達はいる方だと思う。でも、友達が誘いに来ても、席から離れないし、陽の周りに友達がわらわら寄って来て喋ってる感じだ。

 その中には、亜美もいる訳で。

 毎日、落ち着かないのは俺ばっかだ。

「ねぇ、アキ」

 京子が少し膨れた頬を引っ提げて言った。

「な、何でございましょう」

「やっぱり聞いてなかった」

 なにを?

「え?」

「だからぁ、私受かったの!」

「え? なにに?」

 そこまで言ってハッとした。

「もしかして、マネージャー?」

「そう!」

 さっきまで膨れていた頬が、一気に赤みを帯びていく。

「そう、良かったじゃん」

「ん、でもそうでもないの……」

「何で? だってあんなに頑張ってたじゃん」

 そうだよ、京子は頑張ってた。

 啓介の傍に居たいが為に、テニスの本を買いあさって、授業そっちのけで勉強してたの知ってる。そこまで一生懸命になれる恋なんだから、自然に応援したくなるのは当たり前で……。

 その点、俺は全然、一生懸命じゃねぇ。

 毎日、隣に座るのがやっとで、たまに「アキ」って呼ばれるだけで、周りの声も聞こえなくなるくらいになって。

 まぁ呼ばれるって言っても、クラスの用事とか……先生の話を聞いてなかった時とかに「アキ、呼ばれてんぞ」って教えてくれる程度で……。

 それでも嬉しくて、情けないほど、惚れてるって感じて……。



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