AKIRA

 陽といえば、不貞腐れ極まりない。あからさまに舌打ちをすると、ドカッと椅子に座り、机に突っ伏して不貞寝してしまった。

 誰も何も言わない……言えない。

 あの、亜美でさえも、黙って見ているだけだった。

 それより……ああ、やっぱり。

 俺が、京子を傷つけた……。

 でも、京子は、泣きたいのをぐっと堪えて、唇を噛んでいる。そして、笑顔をあげた。

「あ、なんか気にしてる? アキ」

「え、あ、いや、その」

「大丈夫よ、私。服部君にライバル多いの知ってるし、しかも好きな人がいるなんて普通だし、だからって、私、諦める訳じゃないし」

 すごいよ、京子。

「え、何? やっぱ長田って服部好きなの?」

「うん! 大好き!」

「へぇ、なんかごめんね、俺、余計な事言っちゃったみたいで……まさか、こうなるとは」

 申し訳なさそうに佐々木が謝った。

「加藤も、ごめん」

「え?」

 何で俺に謝るんだ? 傷ついたのは京子で、俺は別に、啓介の言う事なんか本気にしてないっつうか……。

「だって、長田とせっかく仲良いのに」

「何言ってるの?! 私は好きな人がアキを好きでも嫌いになんかならないよ!」

「……京子」

 なんか、じん、ってきた。俺の心が、なんか熱くなってきた。

 思わず俺は、京子を抱きしめてしまった。

「あ、アキ?」

 俺の大きな体が、京子の小さな体を包み込む。でも、気持ちは俺の方が小さくて……京子の方が大きくて……。

「あれ、啓介の悪ふざけだから……あいつとは幼馴染で、なんでもねぇよ、だから」

「わかってないなぁ、アキ」

 ゆっくりと京子が、俺の腕の隙間から顔を出した。

「え?」

「私は大丈夫って言ったでしょ? そうやって言われる方が辛いんだよ?」

「え?」

「もう少し、恋の勉強しようか……あ、なんなら私が教えてあげてもいいけど」

「なに、を?」

「だから、アキも好きな……っ……ふが」

 思わず、もう一度抱きしめて、京子の口を塞いでしまった。

「……苦、しい」

「あ、ご、ごめん」

 そう言われて、俺は京子を解放する。

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