AKIRA
「へぇ、新しいマネージャーになったんだ、長田さん」
やべぇ、俺の声大丈夫か? 変に上擦ってねぇか?
とにかく、笑っとけ、俺。
「そうなの! 女子のだけど」
ナイス長田。突然話しかけて『は?』とか言われたら経込むからな。
長田が良い感じに返事してくれたおかげで、俺って自然じゃね? 長田、俺を入れてくれてありがとうって叫びたいくらいだ。
「おめでとう、ま、初めてだろうしアキに何でも教えてもらえばいいよ」
やばいやばい。アキの名前口にするだけで緊張感マックスだ。
「うん、そうする! 教えてね、アキ」
「教えるって、え?」
「また聞いてなかった~、あのね、私、男子のマネージャーにはなれなかったの。でも女子になれたから、それはそれで嬉しいんだよ」
「ま、まぁ残念だった、ね」
「全然、残念じゃないよぉ! アキと部活でも一緒に居られるし嬉しいの」
ホント、長田って嫌みのねぇ奴だな。ちゃんと晶の事、受け止めてくれてるみたいだし。
「よぉ! 聞いたよ長田さん! 残念だったねぇ、男子じゃなくて」
いらない……こいつだけはいらねぇ存在。
服部の奴、また来やがって。折角、俺が晶の視界に入ってるってのに、めっちゃ邪魔なんだけど。
「うん、でもいいの」
「そう? 俺は長田さんに男子に来てもらいたかったのになぁ」
マジで誰でもいいのかよ、こいつは……測れねぇ奴だな。
「おい、服部、お前二組だろ、毎時間よく来るな」
よく言った、佐々木。お前も少しは役に立つんじゃね? そのまま自分の教室に帰れ、服部。
「いいじゃん別に、ダメって決まりないだろ。悪いか」
「悪かねぇけど」
おいおい、そこで引くなよ。
でも佐々木は、ひょいっと長田の耳元に近付くと「狼には気をつけて」と言った。
その言葉に、どんどん長田は頬を紅潮させていった。