AKIRA



 陽は、また暫く笑った後、落ち着いたのか椅子に座りなおした。

「は――ぁっ、それより、俺ら名前呼ばれる前に出てきたから、俺、お前の名前知らないんだ」

「つ、机に書いてあっただ、でしょ。それにそんなに難しい読み方じゃ……」

「でも、人の名前って聞かないとわかんねぇじゃん。俺だってあのままじゃ読めなかっただろ? だから、あれ……なんて読むんだ?」

 陽が、急に真面目な顔になったと感じた。顔は確かに笑ってるのに、瞳の奥が真剣っつうか、そんな感じだ。

「俺はもう知ってるよな、木下が呼んでたし……」

「うん」

「じゃぁ、お前の名前、教えて」

 俺は少し不貞腐れた態度で、視線を逸らした。

 アキラって言えば……思い出してくれるだろうか。

 昔、俺たちが遊んだ事、俺自身の事。



 でも、なんか、怖い。



 お前には今、亜美がいて、だから、俺の気持ち気付かれるのが……怖い。

「お、あた、しは……加藤」

「加藤? 何?」




「加藤……アキ……だよ」




 アキラだって、言えなかった……なんで……こんな。



 嘘……――吐いたんだろう。



「晶(あき)……そっか、アキって読むんだ」

 一瞬、陽はどこか、ふに落ちなさそうな表情を見せたけど、すぐさま笑みを零した。

「あ、うん」

「じゃ、これから同じクラス、よろしくな、アキ」

 アキ……その声で、そう呼ばれるだけで、胸が苦しい。

 あの頃を思い出してしまう。

 懐かしくて、甘酸っぱい、あの時の気持ち。



 そして、変わらない今の気持ち……。




  ~ 今日から高校生・晶side・FIN ~
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