AKIRA


 こいつ、俺の前で晶にキスしやがったっ!!

 例え、それが頬だとしても、許せる範囲じゃねぇ!

 俺の拳が震える……いや、全身が、心が全部、震えている。

 しかも服部の奴、キスしながら、俺の事を見てやがった!

「ばっ、ちょ、てめっ!」

 変な挑発かましやがって、今すぐにでも殴ってやりたいくらいだ!

 晶は、懸命に服部から離れようとしている。でも、服部は、晶の肩にまわした腕を解こうとはしない。

「てめ、マジで!」

 くそ、くそっくそっ!!

 体が動かねぇ……晶、俺はどうすればいい……このまま服部の挑発に乗ってしまえばいいのか。

「馬鹿じゃねぇの?」

 でも、ふいに口を突いて出た言葉がそれだった。

 自分でも驚くくらい冷静な声だった。心の中は怒りでいっぱいなのに、態度には出てこない。ただ、冷ややかに晶を見てしまった。

 警戒心のなさに苛立つ。

 服部に触られている、キスされた晶に……苛立つ。

「馬鹿じゃねぇよ」

 俺の言葉に返してきたのは、服部だった。

 ようやく、晶の肩から、服部が離れた。さっきまでは佐々木の言葉一つに踊らされていたくせに、俺には冷静な態度で出てきやがる。

「ここ、教室だぜ?」

「だから、なに?」

 やけに喧嘩腰だ。そのまま、俺の目の前に立つ服部を、俺は見上げた。

「予選も近いのに、女に現を抜かしてんじゃねぇって言ってんだよ」

「は? 何、やきもち? テニス馬鹿が……」

 こいつ、わかっててまだ挑発するのかよ、ムカつく。

「誰がそんなもん焼くかよ!」

 なんで俺はこんなにも素直になれないんだ。普通にやきもちだって言えばいいのか。

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