AKIRA


 でも、そんな事したら、晶が俺に嘘をついた事まで言ってしまいそうで怖い。

 始めからバレバレだけど、名前を偽ってまで、晶が隠したい俺たちの過去なんだろ。ここで言ったら、俺は晶を傷つける事にはならないか?

「ならいいけど……」

 いいけどってなんだよ。

 服部は「でも」と付け足して言うと、更に俺に顔を近付ける。

「惚れた女に気持ち言って何が悪い? お前だって本当は言いた……っ!」

 その瞬間、俺は服部の胸倉を掴んで立ち上がっていた。そして、服部の顔に更に近付き、耳元で怒りを露わにする。

「てめ、それ以上言ってみろ」

 互いに暫く動けずに、絶対に譲れないんだと瞳がかち合う。

「なぁ、おい、お前らそれくらいにしとけって」

 元はと言えばお前のせいだろうが! 

 俺はそんな思いを佐々木に視線でぶつける。

 佐々木はそこで遠慮がちに身を引いたけど、でも服部は、俺に胸倉を掴まれているにも拘らず冷静に笑っている。

「ま、いいけど」

 そう言って、服部は俺の腕を振り解くと、背中を向けた。

「俺はお前とは違う」

 そう言い残して、服部は教室を後にした。俺の拳が震えて止まらねぇ。

 なにが違うってんだ、くそっ! 晶に対する気持ちは負けねぇ! ただ違うとすれば、口に出しているかいないかだろうが。

 俺は大きく舌打ちをかまし、そのまま椅子に座り、机に突っ伏した。

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