AKIRA


「わかってないなぁ、アキ」

「え?」

「私は大丈夫って言ったでしょ? そうやって言われる方が辛いんだよ?」

「え?」

「もう少し、恋の勉強しようか……あ、なんなら私が教えてあげてもいいけど」

 教えてやってくれ、頼む、晶にもう少し男に対して警戒しろって。

「なに、を?」

「だから、アキも好きな……っ……ふが」









 今のは何だ……アキも? 好きな?

 何を言おうとしたんだ長田! なんで途中でやめる?

 それは『アキも好きな人には言え』とか言うやつか?

 待て、それじゃ、晶にもやっぱり好きな奴がいるのか?

「……苦、しい」

「あ、ご、ごめん」

「ぷはぁ――――っ!」

 口でも塞がれてたか……晶も言えないでいるって事か……誰に?!

 くそ、またイライラしてきた。

「ああ苦しかった、ごめんね」

「あ、でも俺もショック~つうか、はは」

 まだいたのかよ、佐々木の奴……ショックは俺の方だっての!

 目の前で好きな女が、他の男にキスされてたんだぞ?!

 しかも晶には好きな奴がいるって感じなんだぞ!

「俺も長田の事、ちょっといいなぁって思ってたし……」





 なんで、そんなにみんな、自分の気持ちが言えるんだよ、俺に教えろよ……どうすれば、何も気にせずに、気持ちを伝えられるんだ。




「なぁ、服部にもフラれた事だし、ここは俺で我慢とか」

「する気ない!」

「あ、そう」

「あ、予鈴鳴ったよ、次移動だったからほとんど誰も教室に居ないね」

「やっべ、そうだった!」

「おいおい、移動ってどこだよ!」

 そう言って、教室に残っていた数人が慌てている。

 でも、俺、動く気ねぇ……つうか、今さら顔を上げる気力もねぇ……。

「ねぇ、陽、次移動だって」

 木下が、俺の肩を揺らす。

 うるせぇな、わかってるよ、構うな。

 何度も揺すられたけど、それでも、俺は意地になって体を起こさなかった。

「もう、知らないからね!」

 そうだよ、放っておけよ。木下には何も関係ないんだから。












< 114 / 172 >

この作品をシェア

pagetop