AKIRA
陽side
~ もやもや:陽side ~
「十五分休憩」
寺倉先輩が、そう言って、何も言わずにコートに広がる球を拾い始める。
休憩と言われたが、先輩が拾っている以上、誰もがその後に続く。相変わらず、久石はすぐにベンチに向かい、グイッとマネージャーに差し出されたお茶を飲んでいた。
どうにもならん先輩だな……そう思いながら球を拾い終わり、ベンチに向かおうとした時だ。
目の前に、新しくマネージャーになった女二人が、タオル片手にもじもじとしている。一人は寺倉先輩を見つめ、もう一人が……俺?
あ、名前、なんだっけ……覚えてねぇや。
まぁ、マネージャーなんだし、断る理由もなく、俺はその目の前のタオルに手を差し伸べようとした。
「ありが……うっ!」
突然、横から俺の顔にタオルが当たる。しかも、頼んでもいないのに拭きにかかった。
「ちょ、やめ……」
俺は慌ててそのタオルを取り上げた。
「木下?!」
「なによ、そんなに驚かなくてもいいじゃない」
なんでこいつ、ここにいんだよ。そう思い女子コートを見る。
ああ、あっちも休憩か……じゃねぇよ。
「つか、てめぇはあっちのコートに行ってろよ」
「なんで? いいじゃない、はい、お茶」
そう言って俺にお茶を差し出す。
「お前、マネージャーでもなんでもないだろ」
「だから気にしないで、女子も休憩中だから」
そう言う意味じゃねぇっつうの。いくら休憩中でも、マネージャーでもない女に世話させる訳にいかねぇだろ。
「ちょっと! あんた陽君の彼女でもないでしょ?! 離れなさいよ!」
「そうよ! 女子はあっちへ行きなさい!」
「マネージャーでもないくせに!」
フェンスの向こうのお姉さま方が叫んでいる。
ああ、うるさい。