AKIRA
でも、俺は喉が渇いていたせいもあって、手っ取り早く目の前にあるお茶を飲み干した。もう何でもいいや。とりあえず飲んどけ。
「いやぁ――っ! 陽君! そんなお茶飲まないで――っ!」
俺に死ねってか? 茶くらい飲ませろ。別に毒入りでもねぇんだし。
「なんでそんな女のお茶飲むの!」
別にこいつのだから飲んでんじゃねぇよ、お茶くらい誰のでもいいっつうの……ったく、マジやってらんねぇ。
そのまま俺は、コップを木下に返して、ベンチまで行って腰かけた。
「陽君! こっちに来て」
くそ、二時間走りまわって疲れてんだっ……つか、なんで俺がわざわざそっちに行く必要あんの? 訳わかんねぇ。
なんでこうも女はキャーキャーうるさいんだろう。
それに比べて、晶は……大人しいっつうか……昔と比べて物静かっていうか。そういえば晶は、違う意味でうるさいほど笑ってたのに……時間ってそんなに女を変えるもんか?
まぁ、それも違う意味で綺麗に変わったけど。
でも今、もし晶にあれだけ騒がれても、嫌な気持ちにはならないんだろうな。
「お~い! アキ!」
また服部の奴……アキに手なんか振りやがって、ホント、どいつもこいつもムカつく奴ばっかだな。
ちらりと俺は服部ファンの女を見流した。あれだけうるさかった女どもが、何も言わないで大人しくしている。
「へぇ」
よっぽど、前の言葉が効いたんだろうな。
それでも、あいつらは服部が好きなんだな……好きって思いは、そんな簡単に諦められるもんじゃねぇってか。
なんか、俺自身を見てるようだ……ただ、見つめていられればいいとか……。