AKIRA


「なに?」


 晶の声……服部に返事してる。つか、答えるな、晶……無視してろ、無視。これ以上俺をイライラさせるな。

 ほら、長田も見てるぞ、お前の事……まさか服部に好意を寄せてる友達の前で行動起こさないだろ……って、俺が甘いのか、それとも晶が鈍いのか。

 晶は、ベンチから立ち上がって服部のところまで行こうとしている。

「ねぇねぇ、俺にはタオルとかないの? お茶とか持ってきてよ」

 ねぇよ、そんなもん。晶からお前にくれてやるもんは何一つねぇっつうの。

 ほら見ろ、お前の余計なひと言で、晶はまたベンチに戻っていく。

 ざまぁみろ、晶も来るのを諦めた。でも、すぐさま立ち止まって、何か考えているみたいだ。

「ねぇ、陽」

「うるせ、黙ってろ」

「んもう、冷たいんだから」

 冷たいもくそもねぇよ、お前が勝手に男子コート来て、ちょっかい出してくるんだろ。なんでわざわざ俺がお前を構わなきゃならない。

「アキ?!」

そして、そう呼ばれてすぐさま、晶はまた踵を返し、服部の元へと向かう。

 なんでだよ、晶……なんで、そいつのところに行くんだよ。

「やった、アキ来てくれた」

 面白くねぇ……。そう思って見ていると、今度は晶が、ぐいっと服部の肩を掴んで引き寄せた。





 な、何してんだ……あいつ?!





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